失ったもの

4月から新入社員の人はどんな気持ちでしょうか。

ドキドキしたり、不安になったり、やったるでー、みたいな感じですかね。

自分にもそんな時期がありました。

初めてづくしの新生活。

ほとんど不安な事ばかりでした。

上京するとき、会社から電話があって、新幹線の号車と席を伝えると、東京駅のホームまで迎えに来てくれました。

当時の総務部長のはからいだったようです。
もう本当、田舎者ですから助かりました。

ちなみにJRの自動改札も初めてで、どこで切符を入られて、また出てくる時と、出てこないときの差がわかりませんでした。

そんな結構アットホームな感じの会社で、
総務部長も優しい人でいつも気を使ってくられる人でした。

そんな総務部長から、後にも先にも一回だけ怒られたことがありました。

それは女性の従業員がまだ仕事をしているのに先に帰るのはダメと言うもの。

やはり、男として女性に残業させて、先に帰る男は駄目だというものでした。

20年経った今でも、女性の従業員が残業していたら、最低限声をかけるようにしている。
そんな社会人としてのいろはを教えてくれたものです。

ちょっと話は戻り、入社試験の時、東京に一泊するのですが、生まれて初めて独りでビジネスホテルに泊まったのですが、なかなか寝れません、はっきり言ってホームシックにかかって寝れないのです。しかも近くにJRの総武線が走っていて、夜中の12時過ぎまで電車が走ってます。少しウトウトしてくると、電車が通ってうわ!て驚いて寝れないのです。
やっと終電も終わり静かになって眠ることができましたが、今度は始発の電車で起きて、ほとんど寝れなかったのです。

その時、あー駄目だ。東京じゃ暮らせないと、嘆いていました。
もう、敵前逃亡寸前です。

朝になると昨日ブログに書いた、自分を拾ってくれた重役が、朝ご飯を食べさせてくれました。
休みの日だったのに、わざわざ来てくれて、新宿の副都心に連れてってくれました。

田舎者には高層ビルは高すぎます。見上げてかなり驚いたものです。
しかも食べさせてくれた、ご飯が2000円ぐらいしたのに、えー!!て感じです。

一回のご飯に2000円なんて、食べたことがありません。

食事中はいろいろと話しかけてくれたのですが、寝不足となれない食事にまともに受け答えもせず、失礼なことをしたと今でも反省しています。

その後東京駅まで送ってもくれました。

帰りの新幹線の中、都会というものに押されて泣いていました。

正直、田舎に帰ったら進路指導の先生に言って、就職断ろうと本気で思ったものです。

でも、やめずによかったと思います。

確かに大変なことはたくさんあったけど、何とかやってこれた感じです。

会社のみんなや、奥さんに助けられてここまできました。

試験の時、社長から言われたことがありました。

都会の水は慣れないと誰でも思う。だがなれてしまうと、田舎の水など、なんとも思わなくなる。

というものでした。

自分も初めて食べたコンビニの弁当のあまりにも不味さに、これを一生食べていくのかと思うと、気が遠くなる感じがしたものです。

今ではコンビニ弁当がないと生きていけません。それが水に慣れたと言うこのなのでしょうか。

今ではカントリーボーイからシティーボーイになったかなと自分でも思うぐらいです。

でも、いまだに歌舞伎町と池袋と渋谷、原宿は近寄り難いところです。

生きていく中で、仕事と時間に追われ、日常が当然のように過ごしていると、ある日電車が人身事故で止まっていると、電車に乗れず、遅れることを真っ先に考えます。

そこに人身事故で人が死んでいることを、気にもとめない自分がいるのに気づかないのです。

都会に慣れることは、何か田舎で大切にしていたものを失うことなんだと、最近気づいたのです。

4月から上京してくる人がいるかもしれません。

追い立てられる生活が始まりますが、時には立ち止まり、自分を大切にして、他人を愛してください。

失わないでください。大切なものを。