転売屋と子供達の現実

 同僚から、幼稚園という本探して買ってもらえないかとお願いされていました。

とてもお世話になっている人なので、恩返しの意味も込めて探してみることにしました。

幼稚園という本は付録が人気で、すぐに完売する商品です。

今回もトミカのミニカーでフェアレディZのおもちゃが付いて来ます。

トミカのミニカーと言えば、大人でも収集家がいるぐらい人気のものです。

しかも今回は幼稚園の本、限定仕様ということでさらに購入率を高めていました。

いやいや、いくら限定といってもそんなに売れるわけないでしょ。と思うあたな。

違うんですよ。

この幼稚園。実は付録がいいと転売屋が購入していて、どこのネット書籍店でも買う事ができません。

その代わり、メルカリ。Amazonでは転売目的の商品が100件以上もあり、どれも高く販売されています。

子供に買ってあげるものが、転売屋から購入したものなんて。ちょっと寂しくありませんか。

なので、自分は地元の本屋を歩いて足で稼ぐ事にしたのです。

想像はしていたものの、3店回って全て空振り。店員さんからは売り切れましたの一辺倒な回答だけでした。

4店目の本屋では、自分より若い夫婦が子供を連れて、幼児用の本棚を探していました。

自分が見る限り本は見当たりませんでした。その夫婦も探している様で、自分が。

『幼稚園』を探されてますか?。と聞くと。そうなんですよと、返してくれました。

自分も探しているんですけど、無いんですよね。と答えて苦笑いをしていました。

自分が近くの店員さんに在庫を確認すると、やはり。売り切れました。の予想通りの答えが返って来ました。

後ろを振り返ると、父親が子供に、『本ないんだって。』と話しかけていました。

自分の子供でも無いのに。子供から悲しい表情が読み取れました。

Amazonのサイトでも書き込みをしている人がいましたが、転売屋の餌食になって本当に欲しい子供達が買えない。わずか数百円の儲けのために。そんな書き込みがありました。

実際、目の前で本を買えない親子をみると、なんか世の中、間違っている様な気がしてなりません。

自分もあと、1店まわったら諦めようと5店目に行きます。

ダメ元で見に行くと、そこには有りました。

自分は周りを見ました。

先ほどの親子がいないのか。

でも見覚えのある人はいませんでした。

自分は後悔していました。なんでさっきここにも本屋があることを、少しでも話さなかったのか。

心に重い何かが入り込んできました。

それでも当初の目的の本は購入できました。

でも、なんか嬉しくありません。

次の日。会社に出社して同僚に本を渡しました。お釣りの10円はいらないとのこと。自分もいらないのですが、雰囲気的にもらうことにしました。

同僚も結構探していた様ですが、全て空振りだった様です。そしてネットでは転売されていることも知っていました。

自分が。子供に買え与えるものがネットで転売したものなんてダメだと思うんだよね。

そう言うと。同僚も同意見の様でした。

でも。はたから見れば、お前だって人から頼まれて買っているのだから、そこらの転売屋と変わらないだろう。子供の楽しみを奪ってるだろうて。責められている気持ちはありました。

とても複雑な思いですが、本を渡す子供が大きくなって転売をしない大人になってくれることを心の中で願っていました。

自分も今回のことで今後は代理購入はしないことにしました。

そこには、子供の笑顔が作り物にならないために、そう思っていたからです。