たらこ唇に黄色いフォルム

目が覚めると、雨が降っていた。
雨の無規則な音が耳に伝わってくる。
もう、秋も深くなりもうじき冬がくる。
カーテンをあけると窓があるはずなのに、外気の冷たさが一気に肌に伝わってくる。

すこし身震いをして出勤の準備をする。

僕は他の人より出勤がすこし遅い。

気温が上がらないせいか、外にでると冷たい雨が、僕を濡らしてきた。

慌てて傘を広げると、足早に駅へ向かう。

通い慣れた電車に揺られながら、外を眺めていた。

今日は友達きっと少ないだろうな。
雨が降ってるから、風邪を引くといけないから、みんな無理してまでは来てほしくなかった。

会社の最寄り駅に着いた。

かけ込むように会社に入る。

おはようございます。
すれ違う人は、みんな僕に挨拶していく。
自分で言うのもなんだけど、会社の中ではちょっと有名人だった。

職場にはいると、挨拶しながら自分の席につく。

もうすぐすると、今日の本番の打ち合わせが始まる。
あんまりゆっくりする時間はなかった。
おはようさん。
振り向くと先輩の同僚が席に戻ってきた。
先輩の机の上はいつも資料などが、山積みになっている。
いつも崩れないのかハラハラしていた。

打ち合わせが始まる。
僕はとりあえずいる感じだけど、みんなで作ってるというのがよかった。
いつも頷くだけだけど、それでもよかった。
今日は特に大きな事は起きてないようだ。
一安心する。
何も起きていないのが、僕にとってうれしいことだ。

打ち合わせも、終わりしばらくすると本番がはじまる。

スタジオに入り、ヘアメイクさんたちが、手際よくまわりをチェックしては微修正する。

一列にならんで合図を待つ。
何回やってもこの瞬間は緊張する。

最初の本番も終わり、しばらくは時間があく、自分の席に戻るとモニターを眺めては、ライフワークなっているTwitterとFacebookの更新をする。沢山のイイネがもらえて、正直うれしい。

もう大分、日も落ちて暗くなる頃、僕の本番が始まる。

今日は雨が降っているから、カッパを着る。
着づらいカッパなので、スタイリストさんに着せてもらう。

鏡で見て、チェックする。
片腕と片足を上げて、ポーズしてみる。
バッチリだ。
スタイリストさんにお礼を言うと、彼女は軽く頭を下げて、さっきの先輩のところに行ってしまった。

雨が降っていても、外で仕事だ。
ドアの前に立つ。

行こうか。

先輩と二人で外にでる。

出かける時よりは、雨足は大分弱まっていた。

大勢の人が集まってくれていた。
こんな雨降りなのに。
しかも、みんな僕のグッズを手に手にもっていた。
みんな僕に手を振ってくれる。
僕も軽く手を拭って、立ち位置にスタンバイする。僕と反対側には先輩が同じように、スタンバっている。

いよいよ本番だ。

3秒前!2,1。

スタジオから声がかかる。

木原さんー。ソラジロー。

キューがでる。

僕は歩き始めた。

木原さんのところまで来ると、木原さんの話にうなずいたりしていた。

消して声は出さない。
全身で表現する。

一概に無機質になりそうな、天気の時間。
少しでも親しみやすく、わかりやすくみんなに伝えたい。

そんなことを一心に思いながら、本番をこなしていく。

最後の中継で友達のそばで手を拭って終わるのだ。

今日もうまく行った気がする。

雨はすっかりやんでいた。

明日ははれるといいな。