昨日まで知らなかった。
大勝軒のおやっさん。山岸一雄さんが4月1日に亡くなっていたことを。
あれは2007年東池袋が再開発で、大勝軒が閉店する少し前の時だ。

その日は会社を休み、大勝軒の列に開店1時間半前から並んでいた。
それでも常連客がすでに並んでいて、列の後ろのほうだった。
いよいよ、開店し列が店内に吸い込まれていく。
自分も何とか一つ空いているカウンターに座れた。
でも何でそこだけ空いていたのか、そこはラーメンをお客さんに提供する小窓の前で、ラーメンが行きかい、せわしない場所なのだ。
常連なら知っている。だからそこだけ空いていたのだ。
でも、そこに座れてラッキーだった。
厨房の様子がよく見える。御弟子さんたちが店主の登場待っていた。
しばらくするとおやっさんが出てきた。
テレビで見たまんまだった。
来てすぐに、御弟子さんが作ったスープのチェックをする。
味見をして、おもむろに何かを足していた。
そして、OKになると御弟子さんが、おやっさんに木の箱を渡す。
そこには麺が入っているのだけれど、それをお湯の中におやっさんは全部入れてしまった。
その時はかなり驚いたが、それがおやっさん流なのだ。
腹いっぱい食べさせてあげたい。その気持ちの表れなのだ。
それに自分は大盛を頼んでいた。
これも初めてだったので知らなかったが、大勝軒は盛がいい。
通常でも大盛ぐらいくる。それを大盛を頼んだのだ、宇宙盛見たいのが出てきた。
常連客の一人が、美味しいね。というとおやっさんはニコニコ顔でお礼を言っていた。
テレビで見たあの笑顔だ。
自分は普通のつけ麺だけど、あつもりという言葉も初めて聞いた。
麺は冷水でしめるのだけど、しめた後にもう一度、お湯をくぐらせ温めて提供するのがあつもりなのだ。
勉強になった。
つけ麺の味は、昔ながら味で、理屈をごちゃごちゃ入れた味ではなく、少し甘酸っぱい温かい優しい味だった。
何とか平らげ、席を立つ。
美味しかったというと、おやっさんはやっぱりあのニコニコの笑顔でお礼を言っていた。
そして、時は流れ各地にある暖簾分けされた、大勝軒に行くけど、どこもはずれはなかった。
特に最近、新宿で食べた大勝軒は久々に旨いなと思う、一杯だった。
そして昨日の知った、訃報。
いずれは訪れる。
でも、ここに書いた思い出は決してなくならない。
あの、ニコニコ顔の笑顔も一緒に。
心から御冥福をお祈りします。
山岸一雄 よっ!日本一!。